Saturday, June 11, 2011

イングリッシュ・プレミアムとリバプールの補強

ジョーダン・ヘンダーソンやフィル・ジョーンズの移籍金高騰は、”イングリッシュ・プレミアム”とも言われ、FIFAによる自国重視を促す決定が、イングランド籍の若手選手の価格高騰を招いている、と「ガーディアン」紙のマット・スコット記者は指摘している。


++(以下、要訳)++

マンチェスター・ユナイテッドとリバプールは、FIFAとUEFAの新ルールによって、フィル・ジョーンズとジョーダン・ヘンダーソンへのオファー価格を上げることを強いられた。10年も前であれば、2人を獲得するのにかかった1,600万ポンド、2,000万ポンドという値段は記録破りであったはずだが、今では合計3,600万ポンドでイングランド代表キャップはわずかにひとつだ。

イングランドでは、若手イングランド人選手にはプレミアムが付く。FIFAが「18人のメンバーのうち、9人は自国で育った選手でなければならない」というシステムを適用しようとしているから、というのがその説明だ。FIFAでは、この案が賛成で採決され、今はかつてのFAの会長であるジェフ・トンプソンが各国協会やクラブ協会等と話し合いを進めている。トンプソンは、「6+5コンセプト」(メンバーのうち6人は自国出身の選手を送り出す)をベースに解決策を見出そうとしていたが、これは各クラブの反対、もっと言えば、国籍で選手を規制することを認めないEUの反対で日の目を見なかった。EUとの妥協案は、「25名の登録メンバーのうち、8名を自国育成の選手とする」というものだった。

現在までのところは、FIFAによる若手選手育成のための規制は、各クラブの選手選考に大きなインパクトをもたらしてはいないが、FIFAの考える通りに議論が進むならば影響が出始めるし、数年後には運用される見込みだ。ヘンダーソンやジョーンズの値段が高騰するのも道理だろう。

次に大金でオールド・トラフォードに移るのはアシュリー・ヤングになるだろう(彼は既に25歳で15キャップを持つが)。ヤングがそれを真剣に考えているということは、今日予定されていた結婚式をキャンセルしたことからも窺い知れる。おそらく、今頃メディカル・チェックに臨んでいるのだろう。

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このヘンダーソンの移籍に関連して、同じ「ガーディアン」紙のアンディ・ハンター記者もリバプールの将来的な補強ポリシーが見て取れる、と指摘している。


++(以下、要訳)++

6カ月足らずの間に、5,500万ポンドもの大金が、アンディ・キャロルとジョーダン・ヘンダーソンを連れてくるために費やされた。新オーナーのフェンウェイ・スポーツ・グループ(FSG)とフットボール・ディレクターのダミアン・コモッリの下で、高価なギャンブルをやめて原石の発掘に動き出そうとしている。

ヘンダーソンの2,000万ポンドという値段は、もうひとつの入札者であるマンチェスター・ユナイテッドには支払える額でなかったが、リバプールはフィル・ジョーンズ、アシュリー・ヤングの獲得でユナイテッドに対して劣勢である以上、支払う必要があった。

リバプールは、FSGがターゲットとする新進気鋭のイングランド人選手を引き付けるチャンピオンズリーグを戦うことができない。ジョー・コール(週給10万ポンド)やミラン・ヨヴァノビッチ(週給12万ポンド)に支払うサラリーを見れば、良い給料を払うことができることは分かるが、移籍マーケットにおいて優先権を持つクラブでないのだ。サー・アレックス・ファーガソンが言うように、80年代はリバプールの時代、今はマンチェスター・ユナイテッドの時代であり、ジョーンズやヤングの選択もそれを証明している。

FSGには、リバプールの将来について明確な戦略があるが、選手が獲得可能な時には移籍金や給料について吟味している余裕はない。近年は、この点についての曖昧なスタンスがクラブに大きなダメージを与えてきた。元監督のラファエル・ベニテスが、ネマヤ・ヴィディッチやフローラン・マルーダへのオファーを用意しながら、より高額な移籍金でそれぞれユナイテッドやチェルシーに加わっていくのを見て、当時のオーナーに対して指摘していた点でもある。

少なくとも、トム・ヒックスとジョージ・ジレットによる負債にまみれた時代を抜け、今のリバプールはFSGのもとで投資をしていく立場にある。イングランド代表のセンター・フォワードと中盤を少なくとも10年早く5,500万ポンドで獲得する方が、投資家からの感謝されるより遥かにマシなのだ。

ヘンダーソン、キャロル、そしてわずか半年で2,280万ポンドの投資の健全さを証明したウルグアイ人ストライカーのルイス・スアレスがアンフィールドにいることは、リバプールが一貫してクラブを再建し、チャンピオンズリーグの舞台に戻る考えをもっていることを示している。ジョーンズやヤングを獲得できないことは、ケニー・ダルグリッシュにとっては後退を意味するが、彼にはバーミンガム・シティのスコット・ダンやアストン・ヴィラのスチュワート・ダウニング、イプスウィッチのコナー・ウィッカム、ブラックプールのチャーリー・アダムといった代替案があり、オーナーたちもこれを支持する姿勢を見せている。

アダムへの関心が再燃する以前から、リバプールの中盤は人員過剰気味だ。クリスティアン・ポウルセンはチームへの残留を希望しているし、ユヴェントスからの600万ポンドでのアルベルト・アクィラーニへのオファーも、真剣には検討されていない。アクィラーニの代理人は、ミランからのアプローチについても否定している。リバプールは、この夏にこの両選手だけでなく多くの選手を売る必要があるだろう。それでも、こうした選手の売却が決まる前に2,000万ポンド級の選手を獲得できるようになったことが、リバプールにとってはひとつの前進なのだと言える。

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