Thursday, September 1, 2011

締切間際のアーセナル本部

セスク・ファブレガスとサミ・ナスリの移籍と、週末のマンチェスター・ユナイテッド戦の歴史的な大敗を受け、プレッシャーに満ちた移籍市場の締切を迎えたアーセナル。本部の混乱ぶりをBBCのダン・ローン記者が克明に描いている。


++(以下、要訳)++

時計は21時を回り、ハイバリー・ハウスにあるアーセナルの本部とスタッフたちは、トランスファー・ウィンドウ史に残る狂乱状態となった数時間を経て、皆くたびれ果てていた。

社長室では、イヴァン・ガジディスが一日中代理人や他クラブのスタッフに電話をかけまくっていた。彼は、セスク・ファブレガスとサミ・ナスリの売却で可能となり、2-8で敗れたマンチェスター・ユナイテッド戦で必須となった投資を実現させるために必死だった。

そこから数ヤード離れると、クラブの秘書であるデイヴィッド・ミルズ、会計責任者のスチュワート・ワイズリー、トップ弁護士のスヴェニャ・ガイスマーらが怒り狂ったかのように登録文書を埋め、プレミアリーグに念を入れてメールしていた。クラブの財務・法務部門の約20人のスタッフは、かつて記憶にないほど懸命に働いた。

メディカルチェックが済むと、マーク・ゴネラ率いるクラブの広報部門が呼ばれ、ウェブサイト用のインタビューがクラブのロンドン・コルニー練習場で収録された。そこから100ヤード離れた道路には、BBC、ITN、スカイの報道担当が新情報を生中継している。

火曜日の韓国人パク・チュヨンに続いて、ドイツ人のペア・メルテザッカー、ブラジル人のアンドレ・サントスの獲得が決まり、次に放出の話が進んでいた。出口に向かうのはジル・スヌとジョエル・キャンベルがともにロリアン、交渉が長引いたヘンリ・ランスベリーがウェストハムに加わることになった。ニクラス・ベントナーのサンダーランド行きとチェルシーからのヨッシ・べナユンのローンはまだ決まっていなかったが、光明は見えていて、どちらもやがてサインにこぎつけるはずだった。

興奮状態の残り数時間を迎えながらも、ハイバリー・ハウスにはフラストレーションがたまっていた。ファンが求める中盤の看板選手の補強が、アーセナルの手から滑り落ちていた。ミケル・アルテタへの500万ポンド、1,000万ポンドのオファーはエヴァートンに拒絶され、ファブレガスとナスリによって空いた中盤の穴は埋まらないままだった。

そこに突然希望の光が射した。アルテタがエヴァートンの監督であるデイヴィッド・モイーズに明確にアーセナルへの移籍志願を表明したのだ。エヴァートンはこれを妨げない決断をし、23時が近づく中、動きが再開したのだ。時間に間に合うだろうか?

元スカウトのリチャード・ローが中心となって移籍を取り仕切る運営チームも、急いで仕事に戻った。ガジディスもすぐにアーセン・ヴェンゲルに電話をかけ、吉報を伝えた。ヴェンゲルはUEFAの監督会議に出るためにスイスにいたが、常にガジディスとコンタクトはとっていた。この段階では、まだクラブのメイン株主であるスタン・クロエンケもクラブの役員たちも関わっていない。意見を聞いている時間は無く、決断を迅速に下す必要があったのだ。23時過ぎ、アーセナルはアルテタの獲得をアナウンスした。しかし、この最後のスクランブルが、見劣りするメンバーを活性化できただろうか?

ファンサイトの「Le Grove」を運営するピート・ウッドは、この最終日は、クラブの本気度が試された日だったと考えている。「結果的に自分たちで課した時間制限に対して、アーセナルは格段の進歩を見せた。昨日で、トップ4がまた現実的だと思えるようになったが、この夏が成功だったかといえば答は『ノー』だし、クラブが進歩したかといえば、それも『ノー』だ」

「しかしながら、マンチェスター・シティやチェルシーのような何億ポンドも投資できるクラブが出てきて、リーグ優勝争いはもうアーセナルのファンが期待する基準ではない、ということを認める時なのかもしれない。別にこれは誰も口にしたくないような話ではないけどね。この夏、アーセナルもアーセン・ヴェンゲルも怠慢だった。最後の2日間でやった仕事は、6月に済ませておくべきだったんだ」

アーセナル・サポーター基金のティム・パイソンは、より批判的だ。「ミケル・アルテタとペア・メルテザッカーはいい取引だが、真実はより好ましかった2人、フアン・マタとフィル・ジャギエルカを獲れなかったということだ。疑問は、クラブはチケット代を6.5%上げ、450万ポンドの純利益があるのに、なぜそれが使われないのかということだ」。アーセナルのファンは確かに「なぜ、世界でも有数の金持ちであるクロエンケとアリシャー・ウスマノフが大株主にいるのに、移籍金や給与で他クラブに競り負けるのか」を聞く権利がある。

締切日のアーセナルは、間違いなくエキサイティングで、トラウマを持つファンに恵みをもたらし、確かな才能でチームを補強した。アルテタ、ベナユン、ジャック・ウィルシャー、アーロン・ラムジー、ロビン・ファン・ペルシー、そしてテオ・ウォルコットが織りなす攻撃は脅威だろう。しかし、ハイバリー・ハウスのスタッフの頑張りも、ファンの期待の大きさ、失った選手たちのインパクトから判断するに、まだまだ小さく、遅すぎるのだ。

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個人的にアルテタの「チャンピオンズリーグなんてエヴァートンで出るさ」ってスタンス、好きだったけど。減給呑んだらしいけど、あとで上げてやれよな、アーセナル。

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