Tuesday, September 27, 2011

「持たざる者」デイビッド・モイーズの手腕とエヴァートンの懸念

開幕前に取り上げたエヴァートンの記事は、"財政難にもめげずに頑張るエヴァートン"のようなトーンのものだったが、今回のコラムは元アーセナルでBBCの「Match of the Day」で分かりやすい解説をしているリー・ディクソンによるもので、モイーズ監督の手腕を評価しつつ、明らかになる懸念も指摘。


++(以下、要訳)++

週末、エティアド・スタジアムでの正午キックオフとなるこの対戦ほどフットボールにおける「持つ者」と「持たざる者」を描き出せるものもないだろう - ロベルト・マンチーニはすべてを持ち、デイビッド・モイーズはそれを持たない。

マンチーニは、最も高価なメンバーからいかに最大限の力を引き出すかに頭を悩ませる一方で、モイーズは自身が積み重ねてきたエヴァートンの素晴らしい歴史を守るチームを作るために倹約・節約を重ねなければならない。

ベスト・プレーヤーであったミケル・アルテタが移籍締切日にチームを去って以降の悲しみと陰鬱を考えれば、現在エヴァートンが7位につけ、初戦でQPRに敗れて以降無敗であることは驚きですらある。いや、驚くべきではないのかもしれない。昨季のエヴァートンの順位は7位であった。

これだけの財政難を抱えながらモイーズが成し遂げていることには敬意を払う必要がある。彼がチームを組織して到達しているレベル -昨季7位、それ以前も8位、5位、5位、6位- は、人々の期待を遥かに上回る。手品で帽子からウサギが出てくるようなものだ。

選手が怪我をしたり、不調に陥った場合、もしくは単により良い選手が欲しい場合に、代わりの選手を買う贅沢は彼にはできない。これは監督にとっては必ずしも悪いことではなく、むしろ監督がすべきこと、選手のコーチングに専念することができる。仮にモイーズがより大きなステージで仕事をすることがあるとすれば、今のキャリアは監督しての能力を伸ばす上で、カギとなる時期だろう。グッディソン・パークで背負っている制約は、彼が良い監督になるのを助けている。

現役の監督や選手に「Match of the Day 2」に出演してもらうのは簡単ではないが、モイーズとは喜んでソファで話をしたいし、いつだってゲストに迎える価値がある。このスコットランド人と話をすれば、ものの数分で話に耳を傾ける価値があると誰にでも分かるだろう。他の監督と違って行間を読む必要などないし、試合に臨む情熱にあふれている。そして、彼にはスコットランド人監督の伝統を引き継いでもいる。ストライカー不足に悩んでいても、ルイ・サハとの間に一線を引くことに躊躇いは無かった。

モイーズ、そしてエヴァートン・ファンたちへの大きな疑問は、ソリッドなディフェンスと中盤を持ちながら攻撃のオプションに欠ける現在のチームが、果たしてここ数年の達成レベルを維持できるのか、ということだ。2つの主要な懸念は、一体どこからゴールが生まれるのかということと、1月の移籍市場が開いた時にドレッシングルームにどのようなダメージがあるのか、だ。普通のサッカー、そしてアルテタを欠いて7位、8位でフィニッシュするのは簡単ではないはずだ。

エヴァートンにはレイトン・ベインズ、フィル・ジャギエルカ、シルヴァン・ディスタン、ジョニー・ハイティンガらが織り成すソリッドなディフェンスがある。アルテタは最も才能に恵まれた選手だったがマルアン・フェライニとティム・ケーヒルは中盤を脅威あるものにしている。しかし、前線はギリシャU-21代表のアポストロス・ヴェリオスという若きスターを獲得はしたが、確信をもたらすには至っていない。

クラブから生まれる若い選手たちがモイーズのグッディソン・パークでの将来になっている。現在の財政面の厳しさからそれは急務になっているが、それでも機能はしている。中盤のロス・バークリーはここまで最も際立っている一人、そう頻繁には出てこないタイプの選手だ。

ウェイン・ルーニー以降、モイーズは将来違いをもたらすであろう選手にも移籍を容認してきた。これは、アカデミー・レベルの選手たちを引き付けるという意味では大きな違いをもたらす。私がバーンリーでキャリアをスタートさせた頃、バーンリーは選手を囲い込むことで知られていたが、そうした状況は決断を揺るがせることになる。もしあなたが若い選手であったなら、エヴァートンとこの日の対戦相手、どちらがチャンスを得やすいだろうか?

グッディソンではピッチ外に深刻な問題が噴出しているが、これが長引けばピッチ内の問題になりかねない。モイーズは1月を怖れいているだろうし、選手たちへのオファーは来るはずだ。ジャギエルカを失ってなお使える資金がない、という状況に陥れば、代役はそれなりのレベルにならざるを得ない。

これがモイーズが直面している困難な仕事であり、マンチーニのマンチェスターでの仕事とはまったく異なる。しかし、過去2シーズンにわたってシティにダブルを食らわせていたのは、どんな選手がピッチに立つにせよ、良い監督だけが見せることができる違いだろう。

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