Tuesday, September 20, 2011

勤勉なマタがチェルシーにもたらす教養ある作法

この夏、チェルシーの中盤活性化の切り札としてヴァレンシアからやってきたフアン・マタ。クラブからは背番号10が与えられ、その期待の高さが窺い知れる。インテリジェンス溢れる選手と言われるが、そのバックグラウンドとは。


++(以下、要訳)++

フアン・マタは、学位の取得に励みながらチェルシーでプレーする初めての選手ではない。グレアム・ルソーは1987年にチェルシーに加わった時には、当時のキングストン・ポリテクニックで社会学と環境学を学んでいた。ルソーは夕方の考古学のコースにも通っていたが、最初のスタンフォード・ブリッジでの日々ではあまり輝くことができなかった。後に彼は自伝で「過度に真面目でガリ勉だった。孤独だったしイジメに遭っていた」と振り返り、教育を受けた選手はそうした問題に陥りやすいとも付け加えた。

ドレッシングルームというのは厳しい場所であろうし、ルソーが見ていたように、フットボーラーが鎖国の国に生きているというのも、依然としてある程度は真実だろう。しかし時代は変わり、チェルシーも変わった。英語がまだ主流であるし、マタのように勉強をする選手というのも、彼を取材した記者が「実に知性溢れるフットボーラーだ」という程度には珍しい。それでも、グレン・ホドルやルート・フリット、ジャンルカ・ヴィアリ、ジャンフランコ・ゾラという流れを経て、教育への関心がルソーが感じていたような「安易なイジメの対象」の原因となることは無くなった。

それどころか、モダン・フットボールの世界では知性はアドバンテージになる。スペインでスポーツ科学の学位取得を目指し、今はマドリード大学の通信教育で体育とマーケティングを学ぶマタは、記者会見でもいくつかの罠に知性を以って対処してその賢明さを証明した。フェルナンド・トーレスのゴール欠乏症に質問が向けば矛先を巧みにそらし、イングランド人選手をスペイン人選手との比較で蔑むのは避け、レアル・マドリー時代のファビオ・カペッロとの関係についても握りつぶした。マタはスペイン語で話したが、英語の質問を翻訳する必要はなかった。

マタは「フットボールと勉強が並び立たないものだとは思わない。自分のキャリアに集中してるけど、勉強のような他のこともエンジョイしたいと思っている」と語る。これはフットボールの世界の伝統的なレジャーとも言えるパブ通いやブックメーカーでの賭け、ゴルフとは根本的に違う。この点で、マタは俊足と探究心で知られるかつてのウィンガーであるパット・ネヴィンを思い出させる。

ピッチにおいてもこの知性は、アンドレ・ヴィラス・ボアスがチェルシーをよりダイナミックに再編成しようとする中では非常に価値のあるものとなる。マタは監督について「交渉の時にもその話をして、僕は彼のアイディアに確信を得た。違うスタイルでやれるという話をしたんだ。彼はダイナミックで攻撃的なスタイルのフットボールが好きだからね。去年ポルトでたくさんのトロフィーを勝ち取る中でもそれは見せていたと思う」と語る。

チェルシーに来るようにフェルナンド・トーレスに熱心に誘われたというマタは、「素晴らしい選手がいる大きなクラブに来れるのは最高だ。トーレスのゴールなんて時間の問題だよ。偉大な選手だし、ゴールを決める能力があることは既に見せている。どの選手にも色々な時期があるけど、今シーズンは彼のシーズンになるよ。フェルナンドは選手としては今まで同じだと思っている。火曜日のレヴァークーゼン戦の出来は素晴らしかったし、ストライカーとして貢献していると思う」と続けた。自分のポジションについては、「僕は純粋なウィンガーじゃない。攻撃的な中盤の位置でプレーするのが好きだけど、他のポジションもやれるよ。左右や中央の好みは別にないんだ。ラインの間にいるのが好きかな」と説明した。

現在23歳のマタは、15歳でレアル・マドリーに加わったがBチームであるカスティージャでしかプレーできなかった。19歳の誕生日が近付く頃、元レアル・オヴィエドの選手で代理人でもある父親は、他のクラブが興味を示していることことから、レアル・マドリーは契約をオファーすべき、と提案した。しかし、当時監督だったファビオ・カペッロはそれに異議を唱え、マタはヴァレンシアに加入することになった。「カペッロにはチャンスをもらえなかったのか?」と聞かれると、マタは再び慎重にこう答えた。「僕はまだ若かった。契約が終わってヴァレンシアに行っただけで、そもそもカペッロとの接点はそんなに無かったんだ」

おそらくカペッロの考えではなかったのだろう。彼もやがて解任となるし、当時のスポーツ・ディレクターだったプレトラグ・ミヤトビッチは新たなウィンガーとしてロイストン・ドレンテ(今季エヴァートンにやってきた)と契約を進めていた。誰が過ちを犯したのであれ、マタがチェルシーに移籍した際にヴァレンシアが得た移籍金2,350万ポンドのうち、レアル・マドリーの取り分はわずかに46万ポンドだった。

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